先日のヴィノスLIVEでは、いつも配信している東京オフィスを飛び出し、静岡へ。
行先は…静岡最古の名蔵のひとつ、「初亀醸造」!
一般には公開していない初亀醸造さんの蔵から、今回特別に許可をいただき、その“手間を惜しまない酒造り”のこだわりを生配信しました!

静岡駅から車で30分ほどの藤枝市・岡部町。
東海道五十三次の宿場後などもあるこの土地に、1636年創業の老舗「初亀醸造」は静かに佇んでいます。

今回のヴィノスLIVEでは、一般公開されていない蔵の内部を、副杜氏・雨宮さんの案内で特別に見学させていただきました。

初亀醸造さんというヴィノスやまざきとのつながりが深い蔵元さんであること、しかも普段は公開いただけない内容、ということで、配信当初から多くのお客様にご覧いただきました!
ちなみに…
なぜ初亀醸造さんが、ヴィノスやまざきのLIVE配信のお願いを受けていただけたかというと…そこには40年以上前から続く深い関係性があります。
静岡の酒づくりを語るうえで欠かせないのが、醸造技術者・河村伝兵衛さんの存在。
「静岡酵母」(HD-1、NEW-5など)を開発し、静岡らしい上品で透明感のある味わいを生み出した立役者でもあります。
そして、ヴィノスやまざき(旧・山崎酒店)の2代目・山崎巽もまた、河村さんとともに「静岡地酒の魅力を広めたい」という想いで蔵元を支え続けてきた一人。
静岡酵母の普及や蔵元支援を通じて、静岡地酒の魅力を全国に広めてきました。

その静岡酵母を、今も大切に使い続けている蔵のひとつが初亀醸造さんです。
低温発酵で香りを丁寧に引き出し、雑味を徹底的に排除し、普通酒まで大吟醸と同じ基準で造る——そんな誠実な姿勢は、河村伝兵衛さんの技術思想を受け継ぐもの。
そしてその精神は、後にヴィノスやまざきが掲げる「蔵直®」の理念にもつながっています。
なので今回のLIVE配信は、“静岡地酒の魅力を広めたい”という想いを共有してきた仲間同士の取り組みとしてお受けいただいたのです!

画面越しでも伝わる緊張と高揚感。
「ワクワクが止まらない回になりそうです!」
そんな言葉とともに、LIVEは幕を開けました。
■“10キロずつ手洗い”──初亀醸造の酒造りは米への敬意から始まります

最初にご案内いただいたのは、原料処理の区画です。
ここでは、酒造りの基礎となる「洗米」と「蒸し」が行われています。
初亀醸造の大きな特徴は、すべての米を10キロずつ計量し、丁寧に洗うこと。
地下50mから掘った清らかで豊富な地下水を使い、最後はかけ流しできれいに洗っていきます。
「普通酒でも700キロの米を使います。10キロずつ洗うと70回。手間はかかりますが、その分ぬかがしっかり落ちて雑味が減るんです」
と雨宮さん。
大吟醸の麹米から、普通酒の掛け米まで、すべて同じ扱いをするそう。
大量生産を優先すれば省略されがちな工程を、初亀酒造は“全酒平等”に行っていて、
「上のクラスだけ特別扱いしない」
という姿勢が、初亀の味の根幹を支えているのだと感じました。

洗米後は- 浸漬時間を秒単位で調整しながら、狙った吸水率に合わせる「限定吸水」で吸水させ、翌朝には三段式の甑(こしき)で蒸します。
蒸し上がった米は100度近くになっていますが、これをすぐに放冷機に移し、外気を利用して冷まします。
冬に仕込む理由のひとつが、この“自然の冷気”を活かすためだと教えていただきました。
■麹室──酒の性格を決める「10キロの麹箱」

次に案内されたのは、蔵の心臓部ともいえる「麹室」です。
温度は32〜35度、湿度も高く、麹菌が最も活動しやすい環境が保たれています。
初亀醸造では、麹米を10キロずつ麹箱に小分けして仕込みます。大吟醸も普通酒も同じ方法とのこと。
「手間はかかりますが、小分けした方が均一に品質管理できます。
麹菌を米の内部に食い込ませるため、表面を少しずつ乾かしながら広げていくんです」
麹づくりは蔵の個性が最も出る重要工程。麹菌の増え方ひとつで香りも味わいも変わります。
夜中も泊まり込み、1週間以上帰宅せずに寄り添うことも。
「センスが問われる」と雨宮さんが語るのも納得の工程でした。
■静岡酵母──穏やかで品のある香りを生む秘密は

初亀醸造が使う酵母は、すべて静岡酵母。
派手さよりも、穏やかで品のある香りが特徴です。
試験管に保存された酵母を耳かきほどの量だけ取り、フラスコで培養。酵母が最も活動しやすいのは25〜30度ですが、実際の発酵は10度前後の低温で行われます。
「酵母にとって10度は苦しい温度。でもそのストレスが、いい香りを生むんです」
日本酒特有の「並行複発酵」──麹がでんぷんを糖に変え、酵母がその糖をアルコールに変える──が同時に進むタンクの中。
その複雑なバランスを保つためにも、低温管理は欠かせないのですね。
■仕込み蔵──小さなタンクで“意図した味”をつくる

仕込み蔵に入ると、温度は約5度。
ここには純米大吟醸「瓢月」など、上位クラスの酒が仕込まれる小型タンクが並んでいました。
特別純米や急冷美酒などと比べると、半分以下のタンクサイズ。
「小さいタンクの方が温度変化に気づきやすく、狙った味をつくりやすいんです」

発酵中のもろみを覗くと、フレッシュな香りが立ち上り、うーんいい香り!
小さい気泡が出てきていて、お酒が「生きている」ことがはっきりとわかる瞬間でした。
■搾り──袋吊りからヤブタまで、酒が生まれる瞬間

発酵を終えたもろみは、搾りの工程へ進みます。大吟醸は袋に詰めて積み上げ、重力と圧力でゆっくりと酒を滴らせます。
一般酒は「ヤブタ」と呼ばれる機械での絞り工程へ。その後、お酒は一時タンクに保管され、すぐに瓶詰めへと進むそうです。
■いよいよ試飲!──「粋囲」と「瓢月」

LIVE後半では、ヴィノスやまざき限定酒「粋囲」シリーズと純米大吟醸「瓢月」を試飲しました。
●特別純米 粋囲
静岡米・誉富士の旨みと、柔らかな酸のバランスが魅力です。「食中酒として最高」と雨宮さん。
●純米吟醸 粋囲
精米歩合が5%違うだけで、驚くほど滑らかさが変わります。ぜひ「特別純米と飲み比べてほしい」一本とのことでした!
●純米大吟醸 瓢月
兵庫・東条産山田錦を使用。メロンやバナナのような静岡酵母らしい香りがふわりと広がります。白いボトルは、地元・朝比奈の茶室「瓢月亭」に由来しているそうです。
■初亀醸造が守り続けるもの

今回のLIVEで強く感じたのは、初亀醸造の“誠実さ”です。
・普通酒も大吟醸も同じように10キロずつ洗う
・麹はすべて10キロの麹箱で丁寧に
・酵母は静岡酵母のみ
・低温発酵で香りを引き出す
・火入れ後はできる限り早く冷やす
どれも「手間がかかる」工程ばかりですが、その積み重ねが初亀の透明感ある味わいを生んでいるのだと感じました。
LIVEの最後、雨宮さんはこうおっしゃっていました。
「初亀を見かけたら、“あ、あの時しゃべってた人だ”と思い出して、ぜひ楽しんでください。もっといい酒をつくれるよう励みます」

蔵の空気、職人の息づかい、酒が生まれる瞬間。
そのすべてをリアルにお伝えした、濃密な1時間15分でした!
初亀醸造の皆さま、そして雨宮さん、本当にありがとうございました!


静岡の米、水、酵母にこだわって初亀醸造と共同開発した粋な酒をどうぞ!