ヴィノスやまざきが過去扱っていたワインの中で、ダントツの人気だったのが、
「DearRich(ディアリッチ)」
というカリフォルニア・モントレーのワインでした。
白(シャルドネ)は、しっかりとした酸に、ジューシーな果実味、
赤(ピノ・ノワール)は、濃いのに繊細で、果実味たっぷり。
多くのお客様がケースでご購入くださった幻のワインでした。
このワインを造ってくれたのは、カリフォルニアのモントレーでぶどう園を営むリチャード・スミスさん。
1993年、カリフォルニアワインコンテストで優勝し、リチャードさんのぶどう園で勉強させてもらった時に出会いました。
当時、モントレーは無名産地で、 ほとんどのぶどうをナパの有名ワイナリーに販売していました。(現在もですが)
モントレーの山間部は、寒暖の差が激しく、朝晩は夏でもダウンが必要なほど。
海から吹き込む風がぶどうを病害から守り、健康で味わいのあるぶどうが出来るのです。
「自分達でワインを造り、モントレーという産地を広めたい。」
元々はぶどう農家だったリチャードさんが試行錯誤を繰り返し、自らのワインも、
また近隣のワインも10年、20年かけて世界に認められるようになったのです。
「高額になってしまったモントレーのワイン。
何とか、品質は保ったまま3,000円位で売れるものを造ってもらえないか・・・」
リチャードさんにお願いするも、
「全てぶどうを買い取り、タンク一本造るつもりでなければ、それは無理」と、断られました。
それでも諦められず、“Dear Richard”と手紙を書き続けました。
そしてヴィノス社員一同で頑張り、お店を増やし、ついに創業100周年の時に、念願のプライベートワインが実現したのです!
ワインの名前は、ヴィノスで決めなさい、と、言って頂き、
ずっと、ワイン造りをお願いしたお手紙“Dear Richard”をそのままワイン名とし、
ラベルには、最後に書いたお手紙の内容をそのまま掲載しました。
大ヒットした「DearRich」。
しかし、その夢は、リチャードの突然の死で閉ざされてしまったのです・・・。
息子さんも、ワイン造りからは撤退。
ぶどう農家にまた戻る…ということで、諦めました。
それが昨年の2020年。
世界的なパンデミックの中、助けたナパ・ヴァレーのワイナリー「ウォーターストーン」のブレントさんが、
(※その時のエピソードはこちら)
『それなら、僕が再現する!』
と、モントレーのぶどうでDearRichを造ってくれることになったのです!
考えてみればウォーターストーンは
リチャードさんのところから醸造家が独立して作った暖簾分けのワイナリー。
「お世話になったリチャードの想いを私達が引き継ぎます!!」と、
ナパのトップ醸造家が、モントレーのぶどうで造ってくれた【新生DearRich】。
出来上がったワインを試飲して、涙が出てきました。
まさに、これは亡きリチャードの味。
モントレーの山間部の風に揺らぐ、ぶどう畑が目の前に蘇ってきました。
そして、さらに、ナパの技術で美味しくなっている・・・・!
「もうワインをお届けできません。廃盤なんです。」と何度お断りしても、
「DearRichが飲みたい。」と、おっしゃって下さったお客様、
本当に本当に長らくお待たせいたしました。
そして、初めて目に留めてくださった方も、ぜひ、ぜひ、召し上がって下さい。
実は、カリフォルニアは山火事などの影響で、次また十分な量のぶどうを収穫できるかわからないピンチな状態です。
また幻のワインにならないよう、私は、ケースで購入します。
とにかく、フルーティで、この残暑にこそ飲んで元気になって頂きたいワインなのです。
復活した奇跡のワインは、きっと、私達の心にも奇跡を起こし、この困難な時代を
乗り越えられる元気の源になってくれると信じてやみません。
種本祐子
ヴィノスやまざき取締役社長 買い付け隊長
シニアソムリエ カリフォルニアワインマスターコンテスト優勝
アメリカ大使館より長年のカリフォルニアワイン啓蒙の功績を認められHall of Fameを受賞。
有名ワイナリーではなく、農家の畑に出向いた回数は、おそらく業界屈指かも…。