数万円のグランヴァン・ラバーが納得したイタリアワインとは…

先日、ワイン歴40年になろうとしている屈指のワインマニアの友人と、久しぶりにイタリアワインの試飲をしました。

彼のワインマニアぶりは半端ではない。
ピノノワールをこよなく愛し、ボルドーやブルゴーニュの数万円のグランヴァンを飲むために、家計を節約する程の高級ワイン好き。

一方の私は、産地や格付けは関係なく、初心者の方が飲んでも、飲みやすいワインこそ本物、という主義。

真逆なようですが、一周回って、超マニアが選ぶワインと、初心者派の私とは、何故か選ぶワインが一緒なのです。

だからこそ、私達がティスティングする時は、いつもブラインド・ティスティング。
銘柄を伏せて、真剣にティスティングをするのです。

赤ワイングラス

先日、ワイン歴40年になろうとしている屈指のワインマニアの友人と、久しぶりにイタリアワインの試飲をしました。

久しぶりにいろいろなワインを試飲して、いろいろなコメントを書きながらディスカッションしていた時に、あるワインを口に含んだ瞬間、目を合わせて言葉を失い、お互いに目で合図しながら頷きました。

これだ!

本当に美味しいワインを試飲した時は、最初は言葉が出ないのです。

凄い。本当に美味しい!

濃厚でいて、赤や黒に近い、たとえばプラムとかダークチェリーのような果実味に合わせて、ヴァニラとスパイシーな風味が心地よく口の中に広がる...
おそらく、かなり良質なフレンチオーク(樽)の新樽で熟成しているのでしょう。

美味しい、まったく雑味がない…
「ボルドーの格付けグランヴァン、それもかなり上のクラス」
と試飲メモに書きました!

しかし、このワイン、ボルドーのワインではなかったのです。

エミリオ・プリモのボトル

何と...そのワイン「エミリオ・プリモ」は、イタリアワイン。
バローロやバルバレスコと言った、産地がブランドになっているクラシックなスタイルのイタリアワインではなく、「スーパー・トスカーナ」と呼ばれる新しいスタイルのワインです。
「スーパー・トスカーナ」とは、ワイン法の規定にとらわれず、自由な発想で造られる高品質なワインのこと。代表的なワインには、サッシカイヤ、オルネライヤなどがありますが、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー等の国際品種を使用し、ボルドーのようなスタイルで造られています。

 

そんなスーパー・トスカーナの「エミリオ・プリモ」との出会いは、今から20年ほど前。イタリアのトスカーナでワイン造りをしていたイタリア人の友人と共に、「コスパで、高品質なイタリアワイン」を探し歩いていた時のことでした。

何件も訪問したのですが、納得いくものに出会えず、車でローマに向かっていました。
今回はもう日本に帰ろうと、途中でレストランに立ち寄った時に出会ったのです。

注がれた後に一口飲んで、余りの美味しさに感動したワインがありました。
しかしスーパー・トスカーナというものの、名前も聞いたこともない...


どんなところで造られているのか確かめようと、私達はすぐにトスカーナのボルゲリ村に戻りました。
手掛かりをつかもうと立ち寄ったワイン屋さんでも、スーパー・トスカーナのコーナーへ。
なんと、「エミリオ・プリモ」が有名ワインと並べて置いてありました!
そして、村の人が来て、エミリオ・プリモばかりを買っていくのです。

ワインショップにサッシカイアと並ぶエミリオ・プリモ

ワイン・ジャーナリストでもなく、ソムリエでもなく、村の人に大人気なワイン…これだ!と、蔵元を訪問しました。
  

蔵元を訪れると、待っていてくれたのは、当主のマウリッティオさん。

エミリオ・プルモの当主マウリッティオ

家族だけで経営している小さな蔵元で、当時はまだ「エミリオ・プリモ」をリリースしたばかりという状況でした。
しかし、彼は3代目。
何と、お祖父様の代に、サッシカイアと同じブドウ園を買い受け、葡萄を造り始め、お父さんの代に醸造を始め、そしてついにスーパー・トスカーナ 「エミリオ・プリモ」が出来たというのです。

エミリオ・プリモのぶどう畑

丁寧に手入れされた畑、すべて手作業で収穫し、さらに醸造所(本当に小さい!)でも選果。
葡萄を傷めないように、ポンプも一切使わない方法で醸造し、それは私が良く知るボルドーのシャトー・ムーラン・オーラロックと同じ手法で造っていたのです。
フレンチオークでの熟成庫は、ひやりとして、ボルドーの熟成庫と同じ空気を感じました。

エミリオ・プリモを樽熟成するセラー

凄いワインと出会った...
そして、すごいワインに育つだろう...
と、鳥肌が立ちました。

その後、エミリオ・プリモは評価誌でサシカイヤなどと同点やそれ以上の点数をとり、また限られた数量しか生産しないために、ワインを分けて頂けなかった年もありました。

スーパー・トスカーナでありながら手ごろな価格のエミリオ・プリモ

エミリオ・プリモ 赤 2022|ヴィノスやまざき|ワイン通販

今回試飲をした2022ヴィンテージは、数あるワインの専門誌で、グランヴァン並みの点数を獲得

Guida Vitae4/4
Guida Top 100 winemag 92/100
Veroneli 91/100
James Suckiling 90/100
など

初めて飲んだ時の感動をさらに超え、世界レベルのワインに成長していました。

しかし、価格はグランヴァンや他のスーパー・トスカーナとは一桁違うコストパフォーマンス。
ワイン商を通したりせず、そのまま飲んで下さるお客様に届けたい、そんな想いは、まさにヴィノスやまざきと同じ。

ここまで世界的に有名なワインとなったのに、当主のマウリッティオは、ヴィノスやまざきの店頭で自ら試飲を行ってくれたことが、何度もありました。


お客様の声が聞きたい
お客様に喜んでもらえるワインを造るんだ

そんな想いは4代目の息子さんにも引き継がれ、曾祖父のエミリオが譲り受けた畑からスーパー・トスカーナという概念をも超えた、グランヴァンレベルのワインとなっています。

当主マウリツィオさんと息子さん

蔵元には何度も訪問しましたが、その時遊んでいた男の子が、今新しい当主として
グランヴァン・マニアが納得するようなスーパートスカーナを、手頃な価格で造り上げている。

あの時、初めて迎えてくれたマウリッティオの笑顔と、笑顔で「マンマのごはん」でもてなしてくれたマンマ、そして笑顔の少年、そんな忘れられない人生の1ページを思い出しながら、ワインをゆっくりと飲み込みました。

グラスの中をゆっくり落ちてくるワインの涙は、このワインに関わってきた家族の涙のようでした。

当主マウリツィオさんご家族と買付隊長・種本

イタリアワインとして美味しいだけではなく
ワインそのものとして、最高峰のワイン
そんなワインを造るのには、4代かかる…

長年の家族ぐるみでのお付き合いの中で、今では優先的にこの限定ワインも譲っていただけるようになりました。

エミリオ・プリモ」、スーパー・トスカーナを超えるワイン。
ゆっくりと熟成した生ハムやチーズと楽しんで頂ければ幸いです。

元祖買い付け隊長
種本 祐子

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