現在ヴィノスやまざき各店では「ボルドーワイン冬の陣」を展開中です。
若い社員からも「なんで冬の陣なのですか?」と聞かれることもありますが、その理由とは…。
ボルドーは世界を代表するワイン産地です。
シャトー・マルゴー、ラトュール、ペトリュス、オークションなどでもよく名前を聞く有名ブランドのシャトーがひしめき合っています。
実はかくゆう私も、昔はアルコールや渋みが苦手で、ワインが飲めなかった1人で、ティスティングだけはしても赤ワインを飲むと酔ってしまい…。
でもある時、ワインスクールの先生が「これ、飲んでごらん」と、あるワインを試飲させてくれました。
コクがあるのに柔らかく、渋みがあるのに溶けていて、熟成感があってするり~と、喉を通っていく…。
実は、今購入すれば数十万円(当時でも数万)するシャトー・マルゴーの年代物だったのです。
ボルドーワインは熟成すると美味しくなるものもあり(特にグランヴァンと呼ばれる銘醸酒)、それ故に価格も高くなる傾向にあります。
ネゴシアンと呼ばれるワイン商が、新酒を買い付けて熟成させ、年代物になると更に高く販売する…。
そのワインを飲まれるだけでなく、投資として購入される方や、オークション等に高額でかけられるものも。
ボルドーの高級ワインは単に庶民が飲むだけのものではなかったのです。
そんな本格シャトーワインを熟成したものが、普通の価格で販売できないだろうか…
「お客様に本当に喜んでほしい」と、30歳の頃、銀行に飛び込み1000万を借金し、無名産地のワインを輸入しこの商売を始めた私としては、どうしても、ボルドーの年代物を手頃な価格で販売したかった…。
その想いが叶い、運命的に出会ったのが、シャトー・ムーラン・オー・ラロックのエルヴェさんでした。
畑仕事から醸造まで1人で行い、とてつもない高品質はボルドーワインを造っていました。
かつてワインの評価誌で、シャトー・ペトリュスという100万を超えることもある高級ワインと同点を取ったことがあるのに、何と価格は5,000円ほど…。
本来はあり得ない…。
フロンサックという小さな村で、とことん収穫量を落としたぶどうで、ぶどうが痛まないようホースも使わず造り上げます。
コンピューターに頼らず、ぶどうの様子を知るため、発酵の音が聞こえるようにタンクの横に寝袋で寝る…。
それも全て、お客様に本当に美味しいワインを飲んでほしいから。
まさに、一緒…。
だから、ワインが高くなってしまうからネゴシアンには売らない。ある意味ボルドーワインの反逆児です。
私が初めて訪問した時、
「あなた方のような方が来るのを待っていた…」
と、ネゴシアンに売らないで熟成した年代物をセラーの奥から出してくれた…。
それも、全く値上げもせずに、今と同じ価格で…。
さらに、「お客様の感想が聞きたい。」と、日本にも何度も来日。
店頭試飲でも店に立って、何度店番をしてもらったことか…。
「私はデジタルですので、店には立ちません。」という、若い社員に見せたかった…。
というのも、1昨年前に…エルヴェさんは、天に召されたのです。
悔しい…淋しい…一緒に戦ってきたのに…
そんな時、悲しみの中から立ち上がった息子のトーマが、エルヴェさん以上に頑張ってワイン造りを継承したのです。
「コンテストにはワインを出さない」お父さんでしたが、トーマはセカンドワインまで、有名評価誌に出し、そしてその結果は全てが、驚き(でもないですが)の、90点以上。
そして、エルヴェさんが、大切に熟成していた年代物を、何とヴィノスに譲ってくれたのです。
もう、ここまで書いて涙が止まらないのですが…
これは、エルヴェさんが、私に託してくれたワイン。
高級な熟成ワインとして高く売るのではなく、お客様が買いやすい価格で売ってくれという…
でも、今は物流費、円安、全てが厳しい時代。
これが最後の特別価格3,980円となるかもしれません…。
【シャトー・ムーラン・オーラロック 2011】
エルヴェさん、ヴィノスやまざきは戦います。
美味しいワインを、手頃な価格でお客様にお渡しするために。
これは、私たちの想いが詰まった、ボルドーワイン冬の陣です。
「なんで冬の陣なんですか?」と、若い社員に聞かれたけれど、お客様からも聞かれたけれど、これが真実です。
ボルドーワイン冬の陣のストーリーは続きます…。
ヴィノスやまざき 買い付け隊長 ゆうこ社長