「ピンチはチャンス」
今年ほど、この言葉の重さを実感したことはありません。
今年の春は、全世界を揺るがす事態に直面し、全国の店舗の約半分を休業することになりましたが、お客様の支えによって、ここまで続けてくることができました。
「ご来店せずとも、いつも通りにお買い物ができるようにするにはどうしたらいいか?」
「お客様にもっと寄り添うためには、どうしたらいいか?」
と議論を重ね、新サービス「GOYOKIKI(御用聞き)」をスタートするなど、新しいことに取り組むチャンスにもなりました。
思えばヴィノスやまざきは、これまでにもたくさんのピンチに直面してきましたが、そのたびにピンチをチャンスに変えることで、乗り越えてきたのです。
もともとは静岡の小さな酒屋としてスタートした当店が、ワインの直輸入へ大きく舵を切ることになったのも、1990年代に大型量販店がお酒の販売のシェアを占めるようになり、さらに追い打ちをかけるように酒類販売の規制緩和によってディスカウントストアもお酒を販売するようになるなど、逆風の中で「お客様に必要とされる店とは何か?」を模索したことが、きっかけの一つでした。
蔵元との出会いもまた然り。
ピンチの時こそ、とても良い出会いがあったりします。
そんな蔵元の一つが、「シャトー・ラ・グラーヴ」です。
南フランスのラングドック地方でワイン造りを行う小さな農家「シャトー・ラ・グラーヴ」のオロスケットさんと出会ったのは、今から15年前。
彼の叔父様が造るワインが当店で大ヒットし、完売続きで「切らさずに置いてくれないと困るよ」とお客様からお叱りを受けた時のことでした。甥であるオロスケットさんが、「自分のワインの味も、ぜひ試して欲しい」と、連絡をくれたのです。
最初は、品切れしてしまった叔父様のワインのピンチヒッターのつもりで輸入を始めましたが、驚くことに、とにかく品質に対して安い!それだけでなく、ヴィノスやまざきが求める無理難題を、実直に次から次へと取り組んでいってくれたのです。
キリッとしているのに、ボリュームもある、美味しい白ワインが欲しい・・・
それを造るために、彼自身が真夜中にヘッドライトを付けて収穫する。
とにかく濃くてフルーティーなヌーヴォー(新酒)を造ってほしい・・・
それを造るために、完熟を待って収穫を遅らせ、力強く果実味豊かなヌーヴォーを造る。
そんなオロスケットさんの、お客様のために真摯に向き合う姿に、心を打たれました。
ピンチヒッターだったワインは、本命になり、今では多くのお客様に支持されるロングセラーになったのです。
オロスケットさんの畑では、間もなく収穫を迎えるところです。
今年の春には、大変な状況だからこそ、逆に「とにかく良いぶどうを栽培することに集中する」と話していたオロスケットさん。畑の様子を、ビデオレターで送ってくれました。
前向きなオロスケットさんですが、フランスでは、状況が落ち着いてきたとは言え、彼らを含む多くの生産者は、国内の主要な販売先であったレストランやホテルの営業が回復していないため、まだまだ厳しい状況下にいます。
どんな時も私たちの期待に応えてくれたオロスケットさんに、恩返しをしたい。
そんな気持ちで、彼のこだわりのワインを、ご案内し続けたいと思います。
オロスケットさんが最も得意とするソーヴィニヨン・ブランから造る、爽やかな白ワイン。
果実の旨みがギュッと詰まった、まろやかなメルロの赤ワイン。
そして、これらのワインが入った、ヴィノスの原点でもある「ラングドックワインを飲み尽くすセット」をご用意いたしました。
どれも、ヴィノスと共にピンチを乗り越えてきた、ロングセラー蔵元のワインばかりです。
彼らのワインを飲んで、この夏を乗り切る力にしていただけたらうれしいです。
本島