静岡本店の閉店によせて②

「店はお客様のためにある。」
その言葉に出会い、無名だった静岡の地酒を開発した、先代の山崎巽。

静岡の酒を、競合でもある酒屋やデパートのバイヤーに紹介し、
「俺は息子がいないから、やる気のある酒屋に、全部紹介する!」
と、惜しげもなく、ライバル店にどんどん酒を紹介し、廃業の準備をしていました。
(父の紹介で、小さな酒店が地酒の店として有名になった店も日本中にたくさんあります)

店をたたむかもしれない・・・
そんな話を聞いた時に、なぜか「廃業してはいけない」と思いました。

酒屋を女性が経営するという例は30年前にはなく、諦めようとしたときに、先輩経営者から、「これからの経営者は、性別や年齢は関係ない。やりたいという人が経営者なんだ。」と、励まされ、

「そうだ。ここで起業しよう。ワインは飲みたい人が多いけれど、難しい商材。女性だからこそ、お一人お一人に喜んでいただける商売が出来るのでは・・・」

と、店の片隅を借りて、ワインの販売を始めました。

ワインスクールでソムリエ協会の資格を取得したり、多くのワインコンテストに出場して優勝したり・・・ でも、ワインの売り上げは伸びませんでした。

近くにディスカウントストアが出来たり、スーパーマーケットがワインの安売りを始めたりした時は、負けじと、安いワインを仕入れてチラシをうったりもしました。
ワインセラーを借金して作ったりもしました。
でも、売れない・・・

そんな時に行った勉強会で出会ったのが、あの「店はお客様のためにある。」という言葉。
因縁を感じました。

自分の売りたいワインを売るのではなく、お客様の欲しいワインを売る・・・
試行錯誤していた時に、厳しいお客様から、言われた言葉があります。

「君ね。ブルゴーニュやボルドーだって、そんな言葉は、こっちは知らないんだ。ブランドだか、産地だか、そんなものはどうでもいい。安くて、本当に旨いワインを仕入れてきたら、毎日でも来るよ。」

しかし、日本中のインポーターのワインを試飲するも、今ひとつピンと来なくて・・・
その時、店に、フランス大使館の方が訪ねてきたのです。
「いっそのこと、直輸入しませんか?」と。

小売店は参加できない、インポーター向けの試飲会に、特別に呼んでいただきました。
緊張で、インポーターの方々が集まる有名ワインのブースには行けず、誰も人のいないブースに行くと・・・

え??これ何??

というワインに出会ったのです。
それが、当時は全く無名だった南フランス、ラングドック地方のワイン。

とてつもなく美味しくて、濃いのにパワフル過ぎず、優しささえある。
10,000円位なのかな?と、思ったら、なんと1,000円台・・・

衝撃が走りました。

それが、南フランスラングドック地方の小さな村、コルビエールの、シャトー・レゾリューの赤ラベルでした。

これは、もうやるしかない。
でも、輸入ってどうやってやるんだろう。
お金はどうするんだ・・・

でも、決めていました。
絶対に売りたいと。
このワインを静岡のお店で売りたい・・・
喜んでくださるだろう、お客様の顔が一人一人浮かんできました。

きっと、みんな喜んでくれるだろう・・・
お店に並ぶことを夢見て、私はシャトー・レゾリューのボトルを握りしめていました。

そして、その結果は・・・
この続きは、また次回。

「静岡本店の閉店によせて①」はこちらから


本日、そんなヴィノスやまざきの始まりのシャトー・レゾリューから、一年を通しては店頭に並ばない特別なワイン青ラベルが到着しました。是非、お楽しみください。

三代目 ヴィノスやまざき取締役社長
種本 祐子

【プロフィール】
静岡県生まれ。1987年、実家である山崎酒店に入社。先代から受け継いだ「店はお客様のためにある」の思いで、フランスの無名産地より安くて美味しいワインの直輸入を決意。生産者の元を自分たちの足で訪問・交渉し、お届けする「蔵直便」のワインビジネスを始める。直輸入型ワインショップ「ヴィノスやまざき」を全国に24店舗展開する。