8月18日は「インターナショナル・ピノ・ノワール・デー」。
昨日はカベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワインをご紹介しましたが、ぶどう品種と言えば忘れてはならないのが「ピノ・ノワール」です。
ピノ・ノワールと言えば、カベルネ・ソーヴィニヨンと並び、世界最高峰と言われる品種。
フランスのブルゴーニュ地方を代表するぶどう品種であり、「ロマネ・コンティ」や有名なドメーヌ(蔵元)のものですと、数万円~数百万円するものもあるほどです。
しかし、私が「世界には、もっとすごいピノ・ノワールがある・・・」と驚いた一本があります。
それが「マホニー・ヴィンヤーズ・カーネロス・ピノ・ノワール」。
実は、以前の私は、ブルゴーニュこそ最高のピノ・ノワールの産地、と思っていましたが、このワインとの出会いは、まさに目から鱗の衝撃でした。
ヴィノスやまざきに入社し、このワインを初めて口にしたのは、今から15年以上前。
フランス・ブルゴーニュでのワイン醸造の勉強を終え日本に帰国した私は、今よりもっと敷居の高かったワインを、現地のように気軽に楽しんでほしい、と思っていました。自分が体験してきた、ワインを造る人間=生産者の想いもお伝えすることにより、ワインをより身近に思って思えるのではないか・・・と考え始めたところ、「蔵直R便」でワインと一緒に生産者の想いもお客様にお届けしているヴィノスやまざきに出会いました。
私がブルゴーニュ地方で醸造していたピノ・ノワールは、赤ワイン用のぶどうの中では比較的酸味が豊富で、ワイン用語で言う「フィネス(エレガントさを伴った繊細さ、とでも言いましょうか)」が特徴です。この「酸」の質によって、美味しいワインとそうでないワインが分かれるのですが、ブルゴーニュ地方のような冷涼な産地でないと、この良質な酸が生まれないことが多いのです。
しかしながら、ヴィノスやまざきに入社して飲んだ、カリフォルニアの「マホニー」のワインはどれも、奥深さを感じる酸と豊かな果実味を持った、ピノ・ノワールの特徴を最大限に引き出した味わいだったのです。
カリフォルニアは、ブルゴーニュ地方よりもだいぶ温暖なはずなのに、なぜ・・・
その秘密は、畑と生産者に隠されていました。
マホニー・ヴィンヤーズのオーナーであるフランシス・マホニーさんは、地元の名門大学と共同でピノ・ノワールの研究を行うなど、「カリフォルニアのピノ・ノワールの権威」と評されるぶどう農家です。
彼らのワイナリーがあるナパ・ヴァレーは、有名ブランドワインが数多く存在する、カリフォルニア随一の高級ワイン産地。その中で、マホニー・ヴィンヤーズは小さな農家ですが、ナパ・ヴァレーの有名ワイナリーもそのぶどうを買い求めています。こうした有名ワインも、実は彼らのような優れたぶどう農家が支えているのです。
話を聞くと、彼らのぶどうは、数万円クラスの超有名ワイナリーにも卸しており、一番良い区画のぶどうだけ彼ら自身で醸造し、「マホニー・ヴィンヤード」の名前で販売しているとのこと。
しかも、長年の研究に基づき、複数種類の苗木のピノ・ノワールを絶妙にブレンドし、ワインを造り上げていたのです。
ブルゴーニュでは、ぶどうを購入するのではなく、自社畑のぶどうからワインを造る生産者を「ドメーヌ」と呼びますが、マホニーのワインはまさにそんな「ドメーヌ」のワイン。
農家から購入したぶどうでワイン造りを行うことが一般的なナパ・ヴァレーで、ぶどうの栽培からここまでこだわっているなんて・・・希少な、素晴らしい生産者だと思いました。
ナパ・ヴァレーは16の小地区に分かれていて、それぞれの地区で個性あふれるワインが生み出されていますが、中でも最南端に位置する「カーネロス」地区は、サンフランシスコ湾に最も近く、冷涼な海風が流れ込むため、ピノ・ノワールの栽培に適した土地です。
このカーネロス地区は、今でこそカリフォルニアにおけるピノ・ノワール名産地として知られていますが、1970年代初期にはまだ無名の産地でした。その上、ナパ・ヴァレーは、その温暖な気候から「ピノ・ノワールの栽培には不向き」だと誰もが考えていました。
その中で、この土地のポテンシャルを見抜き、いち早くピノ・ノワールの栽培に成功した農家の一人が、マホニーさんだったのです。
カリフォルニアのワイン史に名を刻むほどの生産者であるマホニーさん。
現在は、ぶどうの栽培に専念していて、彼が育てたぶどうから、長年有名ワイナリーの醸造を手掛けていた醸造家のケン・フォスター氏がワイン造りを行っています。
上品でまろやかな味わいで、ヴィノスやまざきでも15年以上のロングセラー蔵元です。
そんなマホニーのピノ・ノワールですが、『世界のピノ・ノワール6本セットプレミア』では、飲み比べもお楽しみいただけます。
マホニーの他にも、カリフォルニアのピノ・ノワールを代表する有名生産者に隣接する畑から生まれる一本、ブルゴーニュの銘醸地区のピノ・ノワール、今注目のニュージーランドのピノ・ノワールなど・・・個性豊かなピノ・ノワールが勢ぞろいしています。
ピノ・ノワールマニアの私も、さっそく自宅でゆっくりと楽しみたいと思います。
ソムリエ 寺田
【プロフィール紹介】 フランスの国立醸造学校を卒業後、ブルゴーニュ地方のドメーヌでワインの醸造経験を積む。帰国後は、生産者の想いをお客様に届け、日本でもワインをもっと気軽に楽しんで欲しいと、ヴィノスやまざきに入社。豊富な知識を活かし、買付業務から社員教育まで、幅広い業務を担当する。