「P」との別れ、そして「V」との出会い

現在開催中のワインフェア『Farmers Wine Fair!』はご覧いただいておりますでしょうか。

中でも『美味しい!なにこれ!あり得ない!』と驚かされたワインが、

【シャトー・ヴェリー 2006】

10年以上熟成されているにも関わらず果実味がいきいきとしていて、ヴィンテージワインが苦手な私でも止まらなくなる味わい。

どんなワインなのか気になる・・・!

いてもたってもいられなくなり、社内でもフランス買付に最も多く赴いたフランス買付隊長 鶴見に突撃取材いたしました!

-このワインに出会ったきっかけは何だったのでしょうか?

『ヴィノスは昔からボルドーの無名産地のワインを紹介してきたんだ。
今人気のシャトー・レグラーヴはコート・ド・ブライ、そして昔コート・ド・カスティヨンの「P」というワインを大ヒットさせ、日本にコート・ド・カスティヨンブームを巻き起こしたんだよ。』


そうだったんですね。ところで「P」はなぜ今ヴィノスにないんですか?

『「P」は、ヴィノスのフィロソフィーとは合わなくなり輸入することをやめたんだ。
同じコート・ド・カスティヨンで美味しいワインはないのかというお客様の声があり、探していた時にシャトー・ムーラン・オーラロックから紹介されたのが「シャトー・ヴェリー」だったんだよ。』


なるほど!「P」との別れがあったおかげでシャトー・ヴェリーに出会えたんですね!

『そうなんだよ。紹介されてヴェリーさんと最初に会った時に、お話を聞かせてもらおうと畑に行ったら、私たちそっちのけで畑作業に没頭されてしまって困ったんだよね。芯からぶどう栽培の職人という感じだったな。でも後から彼の華々しいキャリアを聞いてとても驚いたのを覚えているよ。』

実はナパ・ヴァレーやオーストラリアなど新大陸で醸造の修行をし、フランス帰国後は多くの格付けシャトーの醸造コンサルタントを行うミシェル・ロラン氏の右腕として活躍していたヴェリーさん。紹介してくれたムーラン・オーラロックのコンサルタントもしていました。

ではなぜコンサルタントをしていたヴェリーさんが、自分の名前を冠したワインを造り始めたのでしょうか?

『“シャトー・ヴェリー”は、彼が長年思い描いてきた夢を実現したワインなんだよ。』

コンサルタントとして活躍する一方、長年彼の夢だったもの。それは、

“小規模でいいから、ぶどう栽培から醸造まで徹底的にこだわった自分のワインを造りたい。”

というものでした。

そんな夢を抱き続け、やっと理想的な畑を見つけたのが最初にも紹介したボルドー右岸の“コート・ド・カスティヨン地区”。

4haという庭のような小さい畑でしたが、銘醸地サン・テミリオンに隣接し、ほとんど変わらない土壌・気候条件にも関わらず土地の値段は何倍もお手頃という、彼の理想に叶ったものでした。

そんな畑から造られるワインは、納得した年のみしか生産されないこともあり、極少量生産。そのため毎年輸入されないものの、常に一流の味わいを提供してくれるのです。

『シャトー・ヴェリーのワインは、若い時は果実の凝縮感に溢れ、奥に新大陸を思わせる味わいだけど、長期熟成させるとまろやかな渋みやスパイスが溶け込んだ深みのあるフランスを感じる味わい。すぐに開けても、寝かせても楽しめるのが特徴だね。
世界各国で修業を積んだ彼の人生を表しているような印象だったよ。』


そんなシャトー・ヴェリーは、現地の人を虜にし、無名蔵元でありながら星付きレストランにもオンリストされるほどとなったそうです。

私も見事に虜にされた一人。
またヴェリーが飲みたくなったのでこの辺で終わりにしたいと思います。

カリフォルニアワインのような果実味があり、明るい味わいのワインが注目を集めていますが、目立ちはしない、しかしこだわりが存分に詰まった味わい深いボルドーワインもぜひこの機会にお試しください。

田川 結貴