蔵直のその先へ・・・畑からお客様へお届けする「畑直送」ワイン

9月のテーマは「From Vineyard畑直送)」。
実はこれは、ヴィノスやまざきが長年取り組んできたテーマでもあるのです。

現在、世界のトップ産地として君臨するカリフォルニア、ナパ・ヴァレー。
有名ブランドのワイナリー名でワインを選ぶ方や、こうしたワインを啓蒙していることも多いのですが、実は、こうした多くの有名ワイナリーを支えているのはVineyardぶどう農家)なのです。

特にナパ・ヴァレーは、ナパ以外の産地のぶどうを一部ブレンドすることも許されています。
あまり知られていませんが、実は、有機栽培が盛んなメンドシーノなど、近隣の産地の有名な畑のぶどうをブレンドすることも多く、農業地域であるメンドシーノのぶどうの大部分は、ナパ・ヴァレーの有名ワイナリーに販売されているのです。

私達は、ワイナリーのブランド名でワインを高く売るのではなく、その陰で素晴らしいぶどうを造っているVineyardを訪れ、彼らの造ってきたワインを世に出してきました。

そんな中、久々に出会った大ヒットVineyardが、ネルソンです。

出会いのきっかけは、数年前にもう無くなってしまったのでは?とも言われていた「オレンジ・マスカット」という希少なぶどうで造られたワインを探していた時。

もともとはカリフォルニアで広く栽培されていた品種でありながら、多くのぶどう農家は、大手ワイナリーに売りやすい他の品種にぶどうを植え替えてしまいました。
そんな中、メンドシーノを訪問した際に、奇跡的にオレンジ・マスカットのぶどうを造っているネルソン・ファミリーを地元の広報誌で見つけて、訪ねたのがきっかけです。

オレンジ・マスカットを植え替えなかった理由としては、
「植え替えるお金がなかったんだよ。」というのと、
「息子がいつか帰ってきて、後を継いでくれたら自分たちのワインを造りたいから。ぶどうを大手ワイナリーに売らないで、ワインを造りたいんだ。」
と話していた、ネルソンさん。

交渉の末、当店のためにオレンジ・マスカットのワインを造ってもらえることになり、その数年後には息子のクリスさんが本当に帰ってきました。

有名ワイナリーで醸造技術を学び、素晴らしいワインを造るようになったのです。
その彼が手がけた最初のワインが、こちらの「ネルソン・メルロ」。

もはや甘ささえ感じられるたっぷりとした果実味、でも甘ったるくならないきちんとした酸味もある。
高級なフレンチオークで樽熟成し、果実と酸と渋みが、柔らかく溶け込んでいるのです。
旨い・・・

これは、大ヒットする・・・
そんな予感がしました。

ワイン人生30年の中で、何度か、飲んだ瞬間に「これは大ヒットする!」と直感したことがあります。
こうしたワインは、本当に大ヒットしてきました。

1995年にフランス、ボルドー地方のコート・ド・カスティヨンという当時は無名だった産地で見つけて大ヒットとなった、あるワインと出会った時の印象と似ています。しかし、その後そちらのワインは価格がどんどん上がってしまい、1980円だったワインが今では5000円以上に・・・(もちろん、当店はもう輸入していません。)

私は、このネルソンのメルロを1980円で売ろう、と決意しました。
ネルソンが、ぶどうを有名ワイナリーに売って造ったとしたら、おそらく5000円位の値付けになってしまうと思います。

愚直なまでに素晴らしいぶどうを、家族で造る農家。
そんな農家が自分たちで造るワイン。

有名ワイナリーの陰に隠れて原料ぶどうを造り続けてきたVineyard(農家)の人達に、スポットライトがあたるようなワインを届けたい。
そしていつかは、ブランド名ではなく畑名でワインが語られるようになってほしい・・・
(すでにアメリカ国内では、そんな動きも始まっています。)

そんな気持ちを込めた「From Vineyardワインフェア」が、明日から始まります。
是非、他のVineyardのワインもお試しください。

買付隊長 種本