ゆうこ社長の独り言 「冬の陣」で戦うボルドーワイン、その②

ボルドーワイン「冬の陣」の由来は先日のブログでお話しさせていただきました。(前回のブログはこちら!

実は、私の人生を変えたワイン、ヴィノスやまざきの運命を変えたワインは、フランス・ボルドーに多く存在します。

ワインの飲めなかった私が、ワインスクールでボルドーの1級シャトーの年代物を飲んだ瞬間、ワインがするりと入ってきたというエピソードは度々お話しさせていただいています。
私だけでなく、フランス・ボルドー地方の格付けシャトー、特にメドックの格付け一級の5大シャトーは世界の有名ワインに大きな影響を与えてきました。

「本当に美味しいワインを手頃な価格で、お客様にお届けしたい・・」

銀行で借金をしてまでフランスの無名産地を回っていた頃、やはり有名ワインも勉強したく、これら5大シャトーを何度か訪れました。
当時で数万円、今では数十万もする5大シャトー。
やはり、その味と品格に魅了されたことを覚えています。

そんな時、ふと、「これらの高級シャトーで働く従業員さん達は、どんなワインを飲んでいるんだろう?」と思いました。
まさか、こんな高いワインを毎晩飲んでいる…??と、聞いてみると、

「そんなはずないでしょ。実は、私のハウスワインでとっておきのものがあるの。」

と、教えてもらったのが、メドック農協です。

農協のワインは、農家の造った廉価なワインをブレンドして、紙パックで売っている…そんなイメージだったので意外でした。

実際に訪問して、ティスティングして驚いたのが、この「ル・グランダール カーヴ・サンジャン【別名 ユニメドック】」
農協のワインとは思えないコクと品格、素晴らしいぶどうから造られたワインだな、とすぐにわかりました。
さらに香ばしい樽の香りは、1級シャトーも使っていると思われる新樽の香りも…。
そして、驚くべき安い価格(2,480円)…なぜこの価格でできるのか…。

若き(当時は)醸造家のバッシェさんは言いました。

「私はボルドー大学で醸造学を学びました。同級生には有名シャトーの跡継ぎもいましたが、私の家はワインとは無縁の家系です。卒業後、ワイン造りをしたいとこの農協に就職したのです。当時は農家の造った安いワインをブレンドして売っていましたが、農家にワイン造りを止めるよう指導しました。その代わり、徹底的にぶどう作りをする指導を始めたのです。そして、良いぶどうを造るとそれに見合った価格で農協が買い取り、私が設備の揃ったメドック農協の醸造所で造る…という方法で、このワインは造られているのです。」

絶対に有名シャトーに負けないワインをいつか造る…
若き醸造家の情熱と、圧倒的なコストパフォーマンスに魅せられ、このワインの輸入を始めました。
しかし、商品名が長く難しかったので、POPには「農協ワイン ユニメドック」と書きました。
それが今から30年前…。
ユニメドックは、ヴィノスやまざきでは、何も宣伝しなくても売れる大ヒットワインとなりました。
そして、バッシェ青年は、今では、メドックで「匠」と呼ばれる、銘醸造家となりました。

格付けや、ブランドに負けず、新しい方法でワインを造り続けるバッシェさんは、今尚、農協の職員です。

「絶対に有名シャトーには負けない」バッシェさんの熱き戦いは、まだ続きます。

苦労や困難があっても、頑張ろう。そんな気持ちにさせてくれるボルドーワイン冬の陣、2つめのエピソードでした。

ゆうこ社長

種本 祐子
シニアソムリエ、カリフォルニアワインマスター、他フランスのワインの騎士等、数多くの称号あれど、常にワインの師匠は「お客様」。お客様の求めるワインが、なければ造る!そんな思いでワイン一筋35年。