~匿名ソムリエの謎解き日誌⑤~ 良いワイン=有名産地、は間違いだった!?【前編】

他社の大手インポーターにいた私が、ワイン業界ではありえない「ヴィノスやまざきの謎」を解明するため、ひっそりと始めたこの謎解き日誌。

オリジナルワインの開発、店舗の陳列など、ヴィノスやまざきには驚かされてばかりだが、今日は「他社のワインインポーターでは絶対ありえない」と思ったことを書いておこう。それは・・・

ヴィノスやまざきの主役は、南フランスのラングドック地方のワイン

今回は、この謎を解き明かしていくとしよう。

1.なぜヴィノスやまざきの主役は、南フランスのラングドック地方のワインなのか
2.無名産地の逆転劇。二つの産地のエスプリが詰まったワイン。

1.なぜヴィノスやまざきの主役は、南フランスのラングドック地方のワインなのか

「出てくるワイン、ラングドックばかりで珍しいですね?」

思わずこう訊ねた、社員研修の最終日。
ヴィノスの看板ワインとして試飲に出てきたワインは、ラングドック地方のワインが中心。
普通ワイン専門店なら、主力はボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュなどでは・・・?と思ったのだ。

社長に話を聞くと、始まりは、27年前に初めて直輸入した、南フランスのラングドック地方の「シャトー・レゾリュー」のワイン。

当時は、ボルドーやブルゴーニュなど有名産地のワインが注目を浴び、ラングドック地方のような無名の産地は見向きもされない存在だったらしい。

試飲会でも閑散としたブースにあった、ラングドック地方のワイン。
飲んでみると・・・これが驚くほどに美味しくて、しかも安い。
これだ。そう己の舌を信じ、借金してまで輸入したこのワインは、瞬く間に人気者に。

「産地」は重要じゃない・・・美味しいワインは、探せば無名産地にだってある。
日本のお客様も、美味しければ気に入ってくれる。
こうなったら、自分で探すしかない!

こうして、無名産地でのヴィノスやまざきの買い付けストーリーが始まったのである。

2.無名産地の逆転劇。二つの産地のエスプリが詰まったワイン。

私が入社してすぐ、蔵元の来日イベントで出会った「シャトー・ド・ペノティエ」
試飲してみなよ、と言われ飲んだのが、彼らのプレミアムワイン「エスプリ・ド・ペノティエ」だった。

「・・・!?これ、本当にラングドックのワインですか?」

私はボルドーに住んでいたこともあり、すぐ近くのラングドック地方も訪れたことがある。
でも、現地でもここまで果実味と渋みが完璧に見事に調和した味わいを飲んだことはない。

これはまるでボルドーワイン、それもランクが高いものにも負けない・・・。
今まで自分が飲んでいたラングドック地方のワインは一体何だったのか・・・?と思いながら聞くと、

「これは、カバルデス地区のワインなんですよ」

・・・そんな地区が?
カバルデス地区は「ラングドック地方」と「ボルドー地方」のぶどう品種をブレンドすることのできる、特別なエリアらしい。さらに・・・

「ペノティエは17世紀から続く由緒あるシャトー。しかもオーナーのマダム・ミランはラングドックワイン委員会の会長で、産地のことを知り尽くしているんだよ。

ちなみに、ヴィノスの蔵元たちが世界中から勢ぞろいする『蔵の祭典』というイベントがあってね。
そこでボルドーの蔵元と意気投合して、ボルドー1級シャトーの醸造長を、ペノティエに紹介してあげたんだ。」


なるほど、このワインは、産地も造り手も、ラングドック地方とボルドー地方の融合なのか・・・。

しかし、この「エスプリ・ド・ペノティエ」
この味わいなら絶対高いだろうなぁ、1万円くらいかな?と思いながら、値段を見ると・・・

えっ・・・5,000円(税込5,500円)!?
さらに今だと3,980円(税込4,378円)!!?
一体どうして!!??

聞けば、「蔵直だから」(=余計なマージンがないから安くできる)。
さらに、「長いお付き合いだから、交渉して、特別に譲ってもらった」。

ネゴシアン(=仲買人)を通したワインばかり取り扱っていた(もちろん、まけてくれません)私としては、そんなのありなのか・・・!?と思いながらも、これはラッキーだ・・・と思うように。
なぜなら、高級ボルドーワインレベルのワインが、5,000円以内で手に入るのだ。

しかし、これはまだ始まりに過ぎなかった。
私はこの後、これをはるかに超える旨得ワインに衝撃を受けることになるのだが・・・本日はここまで。
(【後編】に続く)

ヴィノスやまざきの謎解きソムリエ
すみません、今回も匿名でお願いいたします。