静岡本店の閉店によせて③

残り1週間を切りました。
静岡本店によせての思い出の、最後のメッセージです。

「静岡本店の閉店によせて」①②はこちらから



有名なワインを売っても売れない・・・
店はお客様のためにある」ということを学び、当時は無名だった南フランス・ラングドック地方の「シャトー・レゾリュー 赤ラベル」にフランス大使館の試飲会で出会い、「手頃な価格でも本当に美味しいワインをお届けしたい・・・」と、南フランス・ラングドック地方を訪れました。

コルビエールという小さな村にある「レゾリュー」は、すべて手作業で収穫し、当時のラングドックのワインとは思えない品質のワインでした。

「私に輸入させてください!」とお願いしたものの、品質を保つための倉庫もなければ、資金もない・・・
そんな時に助けてくれたのが、静岡の地元の方々でした。

清水の港は、まぐろの荷揚げでも有名な港で低温倉庫の充実した港でした。
地元の倉庫会社さんにお願いして、温度と湿度をワイン向けに設定してもらい、ワインはそちらで保管してもらうことが決まりました。

あとは資金です。
今までは、問屋さんやインポーターさんに翌月の支払いでしたが、コンテナ単位で輸入するには、数千万円の資金がいる・・・

「優良企業にしか融資しない」という地銀に飛び込みました。
担保もない、自己資金もなかった私ですが、情熱を語りました。

「分かりました、貴方に融資しましょう。ただし、6カ月の短期でお願いします。」と、その場で決済していただきました。その銀行は、今でもヴィノスのメインバンクとして、長いお付き合いをさせていただいています。

到着した1コンテナのワインたち。倉庫の中には、1万本近いワインが・・・

「本当に6カ月で売れるだろうか・・・」
心配で、胃が痛くなり、生まれて初めて胃カメラ検査まで行うはめに・・・

でも、お店で購入されたお客様が、また翌日今度は2本買いに来てくださり、そして、その口コミで知らない間に在庫はどんどん減っていったのです。

ある時、近くのレストランのオーナーが買いにきてくださり、「お店で出したところ、大好評だったよ。これから、ずっと使わせてもらうからね。」と、ケース単位で買ってくださいました。そして、小さな花束をもって「ありがとう。大変だったよね。貴方のお陰で、お客様が喜んでくれたよ。」と・・・

もう、涙が止まらなくて、店の裏で号泣しました。
「売上を上げよう」とか、「ソムリエとしての知識を披露しよう」とした時には上手くいかなかったのに、本気でお客様の為に努力したら、お客様から「ありがとう」と、言っていただけるんだ・・・

このワインは、私に商人としての道を教えてくれたワインなのです。

ちなみに、6カ月で売ろうとしたワインは1カ月で売り切れになり、そして他のワインと共に追加をして、また売って追加をして・・・気が付いたら28年が経ちました。

まもなく、この古くなった本店が取り壊されます。
そんな商人の道を教えてくれた本店では、現在、本店にしかないワインのセールが4月17日(土)まで行われています。そして4月18日(日)16時より、本店に「ありがとう」を贈る、閉店セレモニーを行います。

新しい本店は、このDNAを引き継ぎ、静岡本店のすぐ近くの青葉通りに。
そしてなんと、秋には、東京本店もオープンすることが決まりました。

お客様のために」の心を忘れず、これからもヴィノスやまざき一同頑張ってまいります。
どうぞ、これからも、ヴィノスやまざきをよろしくお願いいたします。

三代目 ヴィノスやまざき取締役社長
種本 祐子

【プロフィール】
静岡県生まれ。1987年、実家である山崎酒店に入社。先代から受け継いだ「店はお客様のためにある」の思いで、フランスの無名産地より安くて美味しいワインの直輸入を決意。生産者の元を自分たちの足で訪問・交渉し、お届けする「蔵直便」のワインビジネスを始める。直輸入型ワインショップ「ヴィノスやまざき」を全国に24店舗展開する。