南アフリカなのに1位の白ワインって・・・

ワインが好きでヴィノスやまざきに入社し、ソムリエの資格も取得しました。

しかし、未だに、「なぜこのワインが売れているんだろう。」と、わからないことも時々あります。

その中の一つがボーモンという南アフリカの白ワイン。

南アフリカ?

ワインなら、フランス、イタリア、ドイツ、いや、カリフォルニアワインにオーストラリア・・・
南アフリカのワインがなぜ?

しかも価格が取り立てて安いわけではない・・・

ひそかに美味しいとロングセラーではありましたが、日本経済新聞の「NIKKEIプラス1 何でもランキング」の企画でなんと一位になってしまい、その人気は不動のものとなりました・・・。

確かに美味しい・・・。
芳醇な香り、とりわけ青りんごを思わせるようなフレッシュで爽やかさがありながらも、口に含むと蜂蜜のような濃厚な味わいが広がります!果実味をしっかりと感じながらも絶妙な酸のバランスは、高級ブルゴーニュに引けをとらない繊細さと上品さを感じます。

でもなぜ、このワインを取り扱うことになったのか?
聞いてみると・・・

今からおよそ15年前。
南アフリカのワインの品質が上がり始めた頃、南アフリカ政府から「すべての南アフリカワインを試飲する展示会をケープタウンで開催するから、是非来てほしい」とのこと。

当時はまだ現地に行く飛行機の利便性も悪く、2回乗り継ぎで40時間位かかりました。また、治安が安定していなかった時代・・・。
その条件下の中、現地で数百種類の試飲をするということで、参加したインポーターは2社のみ。
その1社がヴィノスやまざきだったのです。

現地に向かったのは「ヴィノスで一番のワインマニア」とも呼ばれる現会長の種本。
同行したのは、ブルゴーニュで醸造を学んだ経験のある「フランスワインしか認めなかった」寺田。

飛行機の欠航もあり、40時間どころではない時間を経て、現地に到着・・・すべてのワインの試飲が始まりました。

実際、南アフリカのワインはヴィノスやまざきの厳しい試飲で納得できるものは少なく・・・。
「本当に美味しいワインは見つからないのか・・・」と半ば諦めかけていました。

そんな時に「え?これ、高級フランスワイン以上に美味しいのでは?」と、出会ったのが、ボーモンのシュナン・ブラン品種を使ったワインです。

シュナン・ブランは南アフリカで最も栽培されているぶどう品種。
まろやかなコクと適度な酸味を持ったバランスの良い品種ではありますが、故にそこまで大差がなく平凡な味わいになりがちです。

しかし、ボーモンのシュナン・ブランだけは違いました。
そして、現在も人気のあと数件のワインだけが、突出して美味しかったと、会長は言います。

美味しいワインを見つけた・・・が、これだけでは終わりません。
当時はまだ治安が良くなかった南アフリカ国内を、レンタカーを借りて実際に回ることになりました。

辿り着いたボーモンは、南アフリカでも決して有名とは言えない「ウォーカーベイ」というエリア。

中でもボーモンがある南アフリカのケープ地方の南にあるウォーカーベイ地区は、海から10km程しか離れていないため海流の影響もあり、酸度と果実味がしっかりとしたぶどうが出来上がります。

家族経営の小さな蔵元であり、現在はセバスチャンさんがぶどう栽培からワイン造りまで全ての責任者を担っています。

特に、シュナン・ブランの白ワインには力を入れており、彼が造るシュナン・ブランは、他の南アフリカのワイナリーが、お手本として買い求めるほど。

つまり、南アフリカだからではない、ボーモンだから輸入を決めたということなのです。

「ヴィノスって奥が深い・・・」
そんな私がいただいた、南アフリカへの研修の機会。

今は近代的になり、国全体で自然な造りを目指し、品質も向上した南アフリカですが、やはりボーモンは遠く、本当に小さな家族経営の蔵元。現地を訪問した時に、4年前に社長が植樹したぶどうの樹が育っていました。

ヴィノスって、1本のワインのためにそこまでするんだ・・・

南アフリカの研修で学んだことは、ヴィノスのワインに対するパッション。
我々はその思いを引き継いでいくんだ。と、決意した瞬間でもありました。

そんなボーモンのワイン、是非、この暑い季節に冷やして楽しんで頂ければと思います。

南アフリカ研修二期生  高澤 励士