ヴィノスやまざき広尾店 スタッフダイアリー

2016年8月アーカイブ

ヴァテロさんだぜ

 

某脱毛機器メーカーの研究者であったヴァテロさんが潤沢な資金を基に所有するのがボルドーのシャトー・ド・レイニャックです。機材マニアが見たら狂喜乱舞しそうな最新設備が並ぶワイナリーでは、ここ数年で何かと話題にあがる卵型コンクリートタンクも白ワイン『レイニャック・ブラン』に使用しています。

 

THR_95621.jpgのサムネール画像

 

コンクリートの大まかなイメージとしては、還元的で口当たりシャープなステンレスと、酸化的なまろやかさを持つ樽との間に当たるような、しっとりした味わいに仕上がることが多いです。

その他にも、樽香がつかない、内部の温度差が少ない、角が丸いことでシャープさが和らぐといった特徴も見られるようで、例えば「ステンレスでは還元的になりすぎるけど樽香はつけたくない」という時などに最適です。

 

 

卵型は対流が起こりやすくオリが舞うのでバトナージュ(オリを撹拌する行為)をせずともクリーミーかつミネラル感に富み、通常のバトナージュに比べて酸化リスクも抑えられます。果帽も動きやすくなるのでピジャージュ(櫂入れ)の必要がなくなる分、特に赤ワインでの作業効率もあがります。

ちなみに卵型タンクをNomblot社と共に開発したシャプティエさん曰く「宇宙エネルギーも享受できる」とのことらしいです。。。

 

 

もちろん良いことだけではなく、熱が逃げにくいため発酵温度の上昇、腐敗酵母がつきやすい、色素が残るので赤白兼用しづらい、炭酸カルシウムが残るとphがあがるので掃除が大変、重くて高価...などなど各ワイナリーからも悩ましい報告があがっています。

 

 

 

比較的新しい設備なので多くの生産者が実験を試みている段階で、先日もイギリスの専門誌で「容器違いで同じ方法の発酵・熟成をさせた同品種ワイン」という特集が掲載されていました。

 

ワインにもファッションや音楽のように流行があり、レイニャックも最新の技術を使って表現するトレンディなワイナリーの一つです。

 

広尾店 須賀

三毛猫だからミケ。茶色いからショコラ。黄色いから・・・


今月、シャトーメルシャンより『北信シャルドネRDC千曲川右岸収穫』と同『RGC千曲川左岸収穫』のリリース決定が発表されました。
鉄分を多く含む松川が流れる標高の高い西向き砂利質の右岸に対し、標高の低い粘土質左岸とのことで、より細分化された個性を打ち出しています。


日本の地質層・気候は個性豊かで、例えばシャトーメルシャンの醸造所がある勝沼を例にしても、醸造所の横を流れる日川の右岸と左岸で地質による味わいが異なるそうです。

今回ご紹介します『甲州きいろ香』は山梨県玉諸のぶどうを多く使用し、元工場長である上野さんの畑も含まれています。

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香りや造り方の特徴についてはこちらの記事
でご紹介しましたので割愛しますが、デュブルデュー教授と共にボルドー第二大学で研究を行っていたのが世田谷区出身の富永敬俊博士でした。
北里大学で生理学の研究をしていた富永博士ですが、ワイン好きが高じてボルドーに渡り主に白ワインの研究を始めました。


甲州は晩熟のため10月中頃まで収穫を待たないといけないぶどうでもあります。厚い皮からくる苦みを抑えるために80年代までは甘くなるほどたっぷりと補糖をしたワインさえありました(現在行われている補糖は酵母の発酵を促進させる目的)
シャトーメルシャンでも以前までは収穫を遅らせて香りと酸を犠牲にしながら糖度が上がるのを待っていました。
当時メルシャン入社5年目の小林さんが開発研究所に配属されていた際に『甲州アロマプロジェクト』の一環として行われた研究中に柑橘系の香りを発見して、醸造責任者であった味村さんに報告、以前から味村さんと親交のあった富永博士に研究の依頼がまわったことから「きいろ香」が生まれます。


時を同じくして日本の他ワイナリーからもデュブルデュー研究室にコンサルタントの依頼をかけているのですが、教授から「ヴィティス・ヴィニフェラ(欧州系ワイン用ぶどう)しか扱わない」という条件が提示されたため、カリフォルニア大学デイヴィス校に調査を依頼した結果、甲州がヴィニフェラであることが正式に判明しました。

以来、ボルドー大の指導を受けた甲州ワインは変貌を遂げるのですが、2005年にシャトーメルシャンが富永博士と共に「きいろ香」をリリースしたことは日本ワインにとって大きな一歩となりました。


「きいろ香」という名前は富永博士がボルドー時代に「きいろ」と名付けて飼っていた鳥が由来となっています。大学の構内で見つけた黄色い小さな野鳥だったのですが実はメーテルリンク『幸せの青い鳥』と同じ青シジュウカラで、家で育てていたところ羽根が青くなってきたそうです。
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富永博士は08年に53歳で亡くなるまで生涯の大半を香りの研究に捧げました。
葬儀の後に味村さんは「タカさんがいなくてもきいろ香の品質は守ります。でも本当はタカさんに見てもらいたい」と、きいろ香を造り続ける約束をしたそうです。

ヴィンテージが切り替わり、今月から2015年がリリースされています。


広尾店 須賀

甲斐ワイナリー 風間家十六代目聡一郎さん


江戸時代に創設され、有形文化財に登録されるほどの建物ではかつて清酒造りも行われていたそうで、土蔵を改造したセラーは土壁の影響から夏でもクーラーを効かせずともヒンヤリと肌寒いです。
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先月に伺った際はぶどうの実が着色期に入り始める頃で、すぐ裏手に広がる自社畑でもすくすくと成長中でした。

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病害を防ぐために全て棚式で栽培すると同時に、樹が水分を吸い過ぎないように草生栽培(雑草を残しておく栽培方法)を行うため除草剤は不使用。
農薬は必要に応じて使用しており、先代の敬夫さん曰く 「無農薬否定派」 だそうですが '何でも農薬で解決してしまえ' という意味ではありません。
日本の生産者さんの多くは「ビオ」や「有機」という言葉よりも、どうやって健全でおいしいワインを造ろうとするかに焦点を当てているため、仮に自然派でもラベルに謳う方は多くないように感じます(※私も大好きな曽我彰彦さんのSans chimieや金橋さんのSans soufreなどありますが)


本題に戻りまして、甲州の樹は実をつけるという意味では寿命が短いため30年もすると幹を切ってしまうワイナリーが多い中、甲斐ワイナリーさんには樹齢60年を超えるものが残っています。



甲州は温管ベルトを巻いた約1500Lのステンレスで醸されます。
この他にもある10000Lのホーローは「生産量別で分けている」とのこと
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現在は東京農大卒業後にブルゴーニュでも研修を行なった、趣味が読書とサッカー観戦の十六代目、聡一郎さんが醸造を継いでいますが敬夫さんが現役だったころは意見の相違から衝突することもあったそうです。
聡一郎さんは甲州をオリと接触させて風味を引き出す 'シュールリー製法' を取り入れたかったものの、敬夫さんは反対。そこである日聡一郎さんは「オリ引きは全部終わった」とウソをついて実は1タンクだけオリを残していたそうです。
こうして出来上がったワインを敬夫さんに試飲してもらうと意外な高評価。そこで初めて「実はシュールリーでつくった」と明かし、今に至る 『かざま甲州 シュールリー』 が誕生、聡一郎さんが醸造を担うきっかけとなった一本です。

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早摘みと遅摘みぶどうを使用して風味に幅を出し、破砕後にキレイな上澄みを発酵させます。プレスジュースは一部に使用して味わいを整え、培養酵母を用いて15-16℃の低温で1ヶ月近く醸してぶどうの香りと吟醸香のバランスを保ち、果汁が落ち着くのを待ってオリ引き(シュールリーの場合は無し)、6ヶ月タンク熟成は酒石酸を落とす目的での冷却を行わず、甲州は基本的に樽の使用もありません。



『かざま甲州 シュールリー』は農家さんからのぶどうで仕込みますが、日本の農地法では法人が自社畑を持てないことになっています。自社畑を持つ上で甲斐ワイナリーさん含め各ワイナリーが考えたあの手この手の方法が面白いのですが、長くなりますのでご興味のある方は店頭で!すみません!


広尾店 須賀


甘い匂いに誘われたあたしはかぶとむし

 

先日、フランスのワイン樽組合が発表したニュースで、昨年一年間で前年比を超えるおよそ450億円を売上げ、フランスの樽業界は絶好調!という記事を見かけました。

 

オーク樫といえばアメリカン・フレンチ・ロシアン・スラヴォニアン(クロアチアの一部)などが有名ですが、そもそもケルカスアルバ・ケルカスペトライアと言ったようにオークの品種が異なるため個性はそれぞれに異なります。

 

樽メーカーや地域によっても異なりますが、一般的にアメリカンオークにはチロシンというアミノ酸が多く木目が詰まっているのに対しフレンチはかつて、木造戦艦を造るために森林を国営管理して木目こそ均一にされたものの、チロシンが少なく詰まり具合は荒くなるようです(味わいとして繊細になるフレンチの方が木目は詰まっているという声もありますが、この辺りもメーカー・地域によって異なり、例えばフレンチでもリムザンとトロンセの木では詰まり方が異なります)

 

この木目を考慮してアメリカはマス目状に効率よくカットするのに対し、木目が荒く漏れやすいフレンチは中心を残しつつ、非常に効率の悪い裁断になり収量が減ってしまいます。

そのためにフレンチがアメリカンより高価になるのですが、今はウイスキー人気でアメリカンの需要が伸び、価格も高騰中です。

 

寒いロシアやスラヴォニアンでは育てるのに時間がかかって目が詰まりやすいとも言われますが、フランスと違って国営林を管理するだけの政治体制が長らく整っておらず放ったらかしにされたため、フレンチやアメリカンに比べ出遅れています。

 

新樽のほうが高価ですが生産者さんとしては「新樽は高価だから古樽を・・・」というわけにも一概にはいかず、雑菌が怖くて新樽しか買えないから、自分のところで使ったものを翌年から古樽として導入という方もいらっしゃいます(それでも新樽の風味をつけたくない場合、中に水を張って捨てる作業を繰り返すなどします)

※殺菌はトローチ型硫黄を使った燻蒸などの方法があります。

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容量にも種類がありボルドーでは225L、ブルゴーニュでは228L、ドイツでは1000Lなど主要な樽の容量にも地域差が見られます。

樽の大小で風味に差が出るのはもちろんですが、ブルゴーニュとボルドーの微妙な容量差は昔、ワイン商に卸す際にリットル当たりの取引額であったため、生産者たちが少しでも高く売り捌こうとオリを抜かずにそのまま渡したことからブルゴーニュはオリの分の3Lだけ多くなっています。

とはいうものの、樽職人が造るため実際の容量は多少のズレが生じ、測ってみると数リットル前後することがあります。

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(左は226L、右は232L)

 

ワインに与える風味についてはいつも意見がわかれるところですが、私の周りでは「アメリカンの方がヴァニラ香は強い=ヴァニリンが多い」という意見が多数派で、感覚でもその通りだと思うのですが、ある研究ではヴァニリンは木の産地に因らず、実は新樽かどうかが大きな要素だという結果も出ています。

アメリカンで特筆すべきはフルフリルチオール(コーヒー香)とオークラクトン(ココナッツミルク香)という成分と、熱浸透が強いために出るトースト香だそうですが、どんな研究結果だろうとヴァニラ香が強い!!と感じるのは、ラクトンがヴァニリンと絡み合うことや、トースト時にリグニンという成分がアメリカンにとって最適な温度帯で熱分解されることで正常な香りとしてヴァニリンが出やすくなるようです。

ゆえにアメリカンはヴァニラ、ココナッツミルク、コーヒーがよく香るのですが、来世がカブトムシだったらアメリカ樫とフランス樫をかじって検証しようと思います。

 

 

最後にちょっとした小話ですが先週、ある生産者さんが試験的に作ったph指数異常の酸っぱいワインをテイスティングしていた時、たまたま淹れていたヘーゼルナッツコーヒーの香りと重なったワインがカクテルみたいな香りになったことから「ラクトンの相性が面白そうだからアメリカンにぶち込んでみよーかな!?」なんて言っていましたが、まさに樽材の性質を応用した例ですね。

 

 

熟成は栽培・醸造に比べてグラスからの距離が近いので比較的わかりやすいかと思います。

樽は一つの素材に過ぎませんが、産地や目的に注目するとワインの楽しみ方がまた一つ増えるのではないでしょうか。

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広尾店 須賀

今週末のテイスティング

今週末8月6日(土)-7日(日)の広尾店では、こちらのワインのテイスティングをご用意しております。

 

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▲アリアンス・ブラン

 

作り手は、ヴィノスやまざきとは20年来のパートナーである、シャトー・ド・ペノテェエ。

1620年から約400年続く、非常に長い歴史をもつ南フランスのトップシャトーです。

 

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「アリアンス(L'Alliance)」は「同盟」を意味していますが、ラベルには、2人の男性のシルエットが描かれています。

 

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どこかで見たことがあるような、こちらのシルエット・・・

描かれているのは、ペノティエの現オーナーであるニコラ・ド・ロルジュリルと、醸造家のパトリック・レオン氏。

ペノティエとパトリック・レオン氏が、タッグを組んで誕生した、オリジナルワインです。

 

パトリック・レオン氏は、1985年?2003年にバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドで活躍、その間、ダルマイヤックなどボルドーの名シャトーだけでなく、カリフォルニア最高峰のオーパス・ワンや、チリのアルマヴィーヴァなど、世界の名だたる名門ワイナリーでその醸造手腕を発揮してきました。

 

ペノティエは、ヴィノスやまざきの来日イベントをきっかけに知り合ったパトリック・レオン氏を、2007年から醸造チームにむかえ、年々品質を向上させています。

 

ペノティエ最高峰の単一畑「ラ・ブルネット(La Brunette 黒髪の女性の意)」のシャルドネを使用して、世界トップクラスの醸造技術をもつパトリック・レオン氏によって造りあげられた、アリアンス・ブラン。

 

ぜひこの機会にお楽しみください♪

 

★500円/glass(30cc)

★ナッツ&ドライフルーツのおつまみ付き

 

広尾店 本島

愛と青春の南アフリカ


今回は、先週亡くなられた巨匠ドゥニ・デュブルデュー教授に少しだけフォーカスします。
世界的に知られる醸造コンサルタントであり、香りの研究者でもあったデュブルデュー教授は赤ワインが多いボルドーで 「白ワインの法王」 と呼ばれ、グレープフルーツやパッションフルーツなどの香りのもとになる 'チオール' についての研究は特に有名です。


中でも3-メルカプトヘキサノールなどのチオール化合物はソーヴィニヨンブランだけでなく甲州などにも多く見られ、前述のフルーティな香りが出るのですが酸化と銅に弱いため、この香りを生かしたいのかそうでないのかで造り方は大きく異なります。
基本的にはボルドー液 (銅と石灰を含む調剤。自然界に元から存在していたので、ビオディナミ農法でも用いられる自然に優しい調剤) は使いません。わかりやすいことに、チオール系の香りが強いワインに10円玉を入れると香りが消えます。

南アフリカの『アルダリン ソーヴィニヨンブラン』はまさにこの香りを生かした好例です。

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発酵の前にぶどうをドライアイスで冷却しますが、これはポリフェノールオキシダーゼという酸化酵素の働きを防ぐためです。リンゴやモモを切った後に褐色化するのもこの酵素が原因の一つですが、温度が低いと酸化が和らぎます。この特性を利用したものが夜(朝)摘み収穫です。


発酵時も二酸化炭素を使用して嫌気的な環境を作ります。
培養酵母はチオール系の香を強調させることに定評のあるものを使用しつつ、co-inoculationといってマロラクティック発酵(一部の優良乳酸菌がリンゴ酸を乳酸にかえる発酵)を一次発酵とほぼ同時期に行うことで発酵期間の短縮化と共に雑菌繁殖を防ぐことができます。
さらにco-inoculationではマロラクティックにつきもののダイアセチル香(バターやヨーグルト香)の生成を抑えることができるようです。


発酵後のオリとの接触はまろやかさを与えるために行われることが多いですが、発酵直後の炭酸ガスが含まれるため、上澄み発酵を行なった後の良質なオリであれば抗酸化作用が期待できミネラリティやフレッシュさを保つことができます。


・・・と、こんな風にいろんな方法でチオールを守りつつ引き立ててあげることでワインにフレッシュ感と果実感を与えています。
実は同じ方向性の代表格に『シャトーメルシャン 甲州きいろ香』があるのですが、長くなりますのでまた別の機会に。



余談ですが、ボルドーに生まれコンサルタントとして世界中を渡り歩いたデュブルデュー教授、数年前のインタビューで「遺骨はどこに埋めてほしいか」という質問に「愛する人々の記憶の中に」と答えたそうです。


いつかインタビューされて同じことを言ってみたい 広尾店 須賀

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